富裕層に有利な相続税制度見直しへ|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2022.09.05

富裕層に有利な相続税制度見直しへ

富裕層に有利な相続税制度見直しへ
あからさまな節税はできなくなる!?

「不動産オーナーの過度な相続対策を規制しようという動きが見られる。今後、相続対策を監視する目は間違いなく厳しくなるだろう」

 相続税対策に逆風が吹き始めていると、税理士たちの間でもっぱらの噂だ。不動産オーナーにとっては寝耳に水かもしれない。このまま規制の動きが活発化すれば、近い将来、裏技的な手法を使った相続税対策は一切できなくなるかもしれない。最新動向を取材した。

 相続税対策を規制しようという流れは、最近起こった2つの動きから読み取ることができる。一つは、今年4月に最高裁で下された、相続税申告を巡って国税局と相続人で争われた裁判の判決だ。同裁判で焦点となったのは、相続対策の一環で取得した不動産を路線価で評価し、相続税をゼロ円にして申告したことが、正当であるかどうかという点だ。結論から言えば、最高裁は「これは行き過ぎた節税対策だ」とし、認めないという判断を下した。
 相続税を引き下げるために、金融機関から費用を借り入れして不動産を購入するという手法は、決して珍しいものではない。実際、この手法を使って相続税の減税に成功したという資産家も多くいる。それがなぜ、今回のケースでは認められなかったのか?それは、不動産の購入から相続税の申告までの期間が4年半と短く、さらに節税額が容認できるような額ではなかったからだ。結果、最高裁は「一連の行為の目的が税金逃れにあった」と判断した。もし購入資金を借り入れて不動産の購入が行われていなかった場合、被相続人には6億円を超える相続税が課税されるはずだった。それが不動産を購入したことで約2830万円まで下がり、さらに基礎控除によって最終的に相続税0円になった。6億円が0円だ。こんな方法がまかり通っては、国の税制度は崩壊してしまう。はっきり言って、このケースはやり過ぎたのだ。国税局も見逃すはずがない。おそらく絶対に逃さないと、万全を期して裁判に臨んだはずだ。もちろん、相続対策で不動産を購入することが完全にダメだというわけではない。節税額が常識的な範囲で留まるのであれば、国税局も躍起になって取り締まるようなことはないだろう。いずれにせよ、あからさまに節税を目的とした不動産購入は、今後やりづらくなることは間違いない。
 生前贈与の制度を改正しようとする動きからも、資産家の相続税対策を規制しようとする流れを読み取ることができる。現行の制度には「持ち戻し」と呼ばれる仕組みがあり、相続開始から4年以上前に贈与された財産については、相続税が課税されないことになっている。つまり、仮に2000万円の財産を、非課税の範囲内である100万円ずつ、20年間にわたり贈与し続けた場合、課税対象となるのは直近3年分の300万円だけで、それ以前に贈与された1700万円については課税対象から外すことができるわけだ。わざわざ言うまでもないが、相続税の課税対象が2000万円と300万円とでは大きな違いだ。長い時間をかけて行う必要があるとはいえ、これは明らかに富裕層を優遇した仕組みだと言える。
 そこで政府は不平等さを改めるため、令和4年度税制改正大綱で「資産移転時期の選択に中立的な税制の構築」に向けて、本格的な検討を進める方針を打ち出した。「持ち戻し」についても、現行の3年という期間を延長するなどして、富裕層だけが有利にならないように仕組みを改める方向で調整が進められているという。また、「贈与税の基礎控除の廃止または低額化」「相続時精算課税の一律適用」など、他にもさまざまな税改正が検討されているという。
 現時点で、実際に見直しに入ったのは一部の制度のみだが、今後、資産家にだけに有利な仕組みの改正が進んでいくのは間違いない。前出の裁判のケースではないが、後になって課税額が増えたりすることがないよう、正しい知識をもって対策に取り組む必要があると言えそうだ。