東京都が買取再販事業にかかる費用の一部を補助|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2023.06.05

東京都が買取再販事業にかかる費用の一部を補助

東京都が買取再販事業にかかる費用の一部を補助
新規参入のチャンスが拡大

「この取り組みが全国的に広がれば、既存住宅の買取再販に乗り出す不動産会社やリフォーム会社が今以上に増えるかもしれない」

 東京都が4月に発表した「令和5年度既存住宅流通促進民間支援事業」が不動産業者やリフォーム会社の間で話題になっている。
 同事業は、既存住宅をリフォームし、その建物価値や性能を適正に評価して市場に流通させる仕組みを構築する目的で、既存住宅の建物状況調査(インスペクション)や補修・リフォーム、既存住宅売買瑕疵保険制度等の普及に取り組む事業者を支援するために創設された。すでに買取再販を手掛けている事業者はもちろんのこと、これから同事業に参入しようと考えている事業者も補助対象となる。
 具体的には

「既存住宅の仲介・買取再販を行うに際し、建物状況調査や瑕疵保険加入を含めたリフォームを行い、物件の価格評価に反映し、販売する」

「高い水準の省エネリフォームを行い、リフォーム前後の光熱水費の比較など、消費者にその価値を分かりやすく訴求して販売する」

というような取り組みを想定しているという。諸経費も含め、買取再販に関連するすべての費用が補助対象となる非常に手厚い制度だ。
実際にどのくらいの補助が受けられるのか。前者については、仕組みの構築にかかる経費は1件当たりの上限を500万円とし全体の3分の2が、リフォーム工事ならびにインスペクションの費用は1戸当たりの上限を100万円とし全体の3分の2がそれぞれ補助される。後者については不動産売買時やリフォーム時に行うインスペクションならびに既存住宅売買瑕疵保険、住宅履歴等に関する情報発信・普及啓発等の取り組みに対し、1軒あたり200万円を上限に、全体の2分の1が補助される。
同制度の利用価値について、買取再販事業への参入を検討するある不動産会社社長は

「新事業が軌道に乗るかどうかはやってみないと分からない。もしうまくいかなければ事業の立ち上げにかかった費用は水の泡だ。こうした制度を利用すれば投資リスクを軽減できるため、新規事業にチャレンジしやすくなる。東京以外の自治体にも是非取り組んでもらいたい」

と印象を述べた。
一方で、買取再販に参入する企業が増えた場合、全国的に大きな問題となっている放置空き家の増加に歯止めがかかると期待する声も挙がっている。空き家問題に詳しいある専門家は次のように話す。

「今までは空き家を買う側に対する補助はあったが事業者に対する補助はなかった。今回、事業者側の支援制度ができたことで、双方から空き家の活用を促せるようになった。一定の効果は期待できると見ています」

 受付は6月16日まで。自業者選定委員会の審査・選定を経て、7月中旬~下旬を目処に、事業者が決定する予定だ。
 また、東京都は同事業とは別に、不動産業者を対象に、買取再販に係る不動産取得税を軽減する施策も行っている。買い取り後、リフォームして再販した住宅に購入者が居住した場合、当該物件の新築日に応じて、最大36万円の減税措置を受けることができる。買取再販に取り組む事業者は「既存住宅流通促進民間支援事業」も含め、新たな収益の柱の構築、あるいは地域の活性化のために是非うまく活用してもらいたいものだ。