闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第42回)|対談|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2023.07.10

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第42回)

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第42回)
18 マーケティング分析-情報戦略と駆引き①

野村 全部ストレートのサインを出すわけがない。現役時代からスコアラーがいたんだ。毎日新聞の記者で野球の経験がまったくなくて、でもすごい達筆でね。きれいな字を書くの。日本でスコアラーっていうのを採用した第一号だよ。何となく遠征先でこの人の部屋に行ったら一生懸命付けてんだよ。「これ何でそんな丁寧に付けてんですか?」って聞いたら、これを会社に出して契約更改の資料にするって言うんだよ。それで見ていたら、何か使えそうになってきたんだよ。データなんて言葉もない時代はだから記録って言ってたんだけど、これ使えるんじゃないかって思って。それで「相手チームのピッチャーが俺に投げてくる球種とコースを書いて毎試合僕にもらえませんか?」ってお願いしたら、「お安い御用だ。付けてやるよ」と。それから毎試合付けてもらって持ち帰ってボールカウント0000から書いていったの。ボールカウントが12種類あることすら知らなかった。それでおれになげてくる球種をコースとボールカウントをチェックしてある一つの傾向が分かってね。ノーストライクツーボールは100%インコースがないんだよ。

-それがデータ野球のできたきっかけなんですね。

野村 データなんて言葉もない時代だから。毎日ボールカウントをはめ込んで分析して、それはすごい役に立ったよ。12種類のボールカウントで振り分けてピッチャーが優位なときにはどういう球を投げる傾向があるか、勝負事であり野球であるからにはぜったいはないわけで確率なの。それ以来野球は確率のスポーツだって言い続けてきているんだけどね。だから確率の高い球とコースを選択すると、そういう頭になっちゃってそれで段々とデータを取り込むようになっていて、首を振ったのもチェックしてもらって、首を振ったら何が多いかっていう、ランナーなしのとき、得点圏に走者がいるときの配給もチェックしていって。どんどん面白いくらい相手のピッチャーの考えていることが手に取るようにわかるようにった。

-それから空に打率が上がってきたんですか?

野村 打てるようになって三冠王が取れたよ。一番野球の楽しいときだね。

-今でこそ当たり前ですけど、野村監督がそのときデータでやっているというのはみんな分かっていて、それを真似しようという人は当時はいなかったんですか?

野村 全然いなかった。野球は理屈じゃねぇよって馬鹿にされたぐらいだよ。

(次号に続く)