オープンハウス、住宅ローンの不正利用が発覚|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2023.08.07

オープンハウス、住宅ローンの不正利用が発覚

オープンハウス、住宅ローンの不正利用が発覚
「みんなやっているから絶対にバレない」と顧客を勧誘

 大手企業に勤める従業員の不正が後を絶たない。今度は格安住宅メーカーとして知られるオープンハウス(東京都千代田区)の営業マンによる住宅ローンの不正利用が発覚した。同様の事件は、2019年に発覚した「フラット35」を投資用物件に悪用した事案が記憶に新しい。あれからまだ4年しか経っていないのに、なぜ同社の従業員は不正に手を染めたのか。事件の概要を取材した。

 事件は「週刊文春」の報道によって明らかになった。同誌によると「オープンハウス」の複数の営業マンが、住宅ローンを組んで自宅として購入した後、賃貸として貸し出すよう助言し、新築物件を販売しているという。実際に勧誘を受けたという複数の顧客が証言しているという。
 ここで改めて言うまでもなく、各金融機関は住宅ローンを利用して投資用の物件を購入することを禁じている。住宅ローンはあくまでも自宅として利用する家を購入するための融資制度だ。もちろん、購入後しばらくしてから「転勤で遠方に引っ越すことになった」等、何か特別な理由があれば話は別だが、最初から賃貸することを目的とした利用はご法度だ。金融機関関係者も

「賃貸目的で住宅ローンを利用したり、あるいは住宅ローンで購入した物件を返済期間中に金融機関に無断で賃貸することは、融資契約違反に該当する可能性が高い」

と指摘する。
 万が一、不正利用が発覚した場合、利用者は借入金の全額一括返済を求められることになる。これには金利や、返済が遅延した場合に発生する遅延金も上乗せされるため、結果的に不正利用者の負担は相当大きなものになる。そのまま全額返済できるケースは極めて稀で、たいていはせっかく購入した家を手放すことになる。うまく不動産投資用の融資に借り換えできたとしても、金利が2~3倍に跳ね上がるため、収支的にはかなり苦しくなる公算が高い。また、それだけで済めばまだ良いが、実際は返せば解決というわけにはいかない。不正利用の事実は信用情報に事故として記録されるため、以降は融資を受けた金融機関はもちろんのこと、他の金融機関からの融資も受けることができなくなるだろう。

「私はあの会社の言われたとおりにやっただけだ」

という言い訳したくなるところだが、残念ながらそれは一切通じない。なぜなら責任はあくまでも融資を受けた本人にあると判断されるからだ。記憶に新しい「フラット35」の不正利用事件では、2018年10月から2019年8月までの約2年間で、105件もの不正案件が見つかった。その後、不正利用者に対してどのような対応が取られたのかは不明だが、おそらく相当数が購入した物件を手放したのではないだろうか。
 オープンハウスに話を戻す。顧客の証言を見る限り、同社営業マンのやり口はかなり悪質だ。というのも、同社の営業マンは、投資目的で住宅ローンを利用することはできないと知っていたため勧誘を断った顧客に対し、

「私や上司も含め、みんなやっているから絶対にバレない」

と執拗に営業しているからだ。「私も上司もやっている」とは一体どういうことか?倫理観の欠片もない発言だと言わざるを得ない。これが業界を代表する大手企業の営業マンなのかと呆れてしまう。一方でこの発言から不正利用が会社ぐるみだったのではないかと疑う声をある。業界に詳しい評論家は

「顧客に勧めるだけでなく、すでに本人や上司もやっているという発言には、正直驚きました。本人がノルマを達成するために周りに内緒でやっていたわけではないということが、この発言で明らかになったと思います。契約をとるためなら何でもありだという姿勢がよく表れていますね」

と指摘する。根はなかなかに深そうだ。
 同社は報道を受け、「こちらについては適切に調査及び対処しております」として、公式サイトに謝罪のメッセージを掲載した。しかし掲載から1カ月が経過した7月下旬時点で、その後の発表はない。今回の一件に前後して、別のトラブルも生じているようなので、調査が進んでいないのかもしれない。今後の動きに注目が集まる。
 それにしても最近は大手による不祥事がとにかく多い。それこそ毎月のように大手が絡んだ不祥事が世間を賑わせている。会社ぐるみにしても、そうでないにしても、結局は倫理観の欠如が原因であることは間違いない。率先して業界の健全化を訴えていかなければいけない立場であるはずの大手がこんなことをしているから、日本の経済はなかなか良くならないのだ。オープンハウスは今回の事件を大いに反省し、気を引き締めて今後の営業活動に邁進してもらいたい。さもなくば、失った世の中の信頼を取り戻すことはできないだろう。同社が掲げる「今年度中の売上高1兆円」も、夢のまた夢となるだろう。