建設業者の倒産件数が過去5年で最高を記録する見込み|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
Pick Up

2023.10.02

建設業者の倒産件数が過去5年で最高を記録する見込み

建設業者の倒産件数が過去5年で最高を記録する見込み
資材費、人件費の高騰が重くのしかかる

 コロナ禍が収束して以降、さまざまな業界で歪(ひずみ)が現れ始めている。建設・建築業界も例外ではない。ここにきて中小規模事業者の倒産件数が右肩上がりで増えているのだ。現状を取材した。

「先日、長年取引していた建築業者が倒産した。知り合いの業者が潰れるのは今年に入ってからもう3件目だ。どうやら現場はたくさんあるのに儲からないらしく、仕事をすればした分だけ赤字が膨らんでいたらしい・・・。これじゃ業界の先行きは真っ暗だ・・・」

 コロナ禍を機に住まいへの関心が高まったことで活気づくリフォーム市場だが、その裏で中小規模事業者の倒産が相次いでいると大きな話題になっている。
 話題の発端は信用調査会社・帝国データバンクが9月10日に発表した「全国企業倒産集計2023年8報」だ。発表によると、負債1000万円以上の法的整理による建設事業者の倒産は、今年8月31日までに1082件にも達したという。これは2022年に通年で記録した1204件に迫る勢いで、8月末までの累計で1000件を突破したのは2017年以来のことだ。このままいくと倒産数が1600件を超えるのは時間の問題で、過去5年で最多になる見込みだ。リフォーム市場はコロナ禍中も、多くの業種が苦戦を強いられる中、「防災・減災需要」やテレワークリフォームに代表される新たな需要などを支えに、比較的堅調な状態を維持してきた。それにもかかわらずここにきて倒産件数が急増しているのはなぜなのか。  
 建築業者を苦しめているもの、それは「建築資材の高騰」と「慢性的な人手不足」だ。前者はウッドショックや円安による輸入価格の高騰、ウクライナ危機に端を発する燃料高騰などが原因で、今のところいずれも解消の見通しは立っていない。現時点で、資材価格は高止まりしているものの、木材は5年前の2倍もする。鋼材や生コンも高騰した値が下がる気配はない。外からどうこうできる問題ではないだけに、今は動向を見守るしかない。建築業者にとっては何とも歯痒い状態だろう。
 一方で「慢性的な人手不足」も深刻だ。「拘束時間が長い」「仕事がきつい」「体育会系」など、他の業種に比べてハードなイメージが強い建築仕事は、若い層から敬遠される傾向が強い。さらに建築士や施工管理士といった有資格者の確保も大変で、中小建築業者は常に人手が足りてない状態だ。そのためせっかく仕事があっても、人手不足が原因で受注できない悪循環に陥るケースが多いようだ。また、仕事を受注できたとしても、高騰した資材と人件費がダブルパンチで重くのしかかり、利益を確保することは困難だ。建築業者を取り巻く環境は、過去にないくらい厳しい状態だと言える。
 もちろん、資材や人件費の値上がり分を、代金に上乗せできれば問題ない。しかし、現実問題としてそれはかなり難しい。多少はできても、全額というのはまず無理だ。ある建築業者は

「契約時期と実際に資材を仕入れるタイミングは、大きな現場ほどズレが生じます。その結果、工事期間中に施工コストが大きく狂ってします。施主がその分を負担してくれれば良いが、「すでに予算を組んでいるから無理」と断られるのが関の山です。かといって現場はすでに動いてしまっているので、途中で止めるわけにはいかない。結局、業者側で負担するしかありません」

と厳しい状況を話す。
 繰り返すが、仕事がないわけではない。むしろリフォーム需要は今なお旺盛だ。一体どうすれば良いのか。リフォーム市場に詳しい専門家は次のように分析する。

「飲食に代表されるように、他の業界では人手不足を補うためにDX化やロボット導入を推進しています。しかし、建築現場はそうはいきません。釘一本打つのも結局は人の力と技術に頼らざるを得ません。どこまでも人がいないと成り立たない業種なんです。ではどうすればよいか。家計の糸口となるのが多能工化による生産効率の向上だと、私は考えます。一人の職人でさまざまな工事ができるようになれば、同じ現場で何人も人を雇わなくて済みます。その分人件費を節約できるし、一方で職人の給料は上がります。多能工職人をどれだけ育成できるかが、中小建築業者が生き残っていく唯一の道ではないでしょうか」

 外から見れば好調そうな建設業界も、実際は苦戦している業者が少なくない。資材価格、人件費の高騰がある程度、落ち着くまでは、この状況は続きそうだ。