DMMオンラインサロン~第3章 M&Aの会社の価格・価値とは①~|知識・教養|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2023.11.20

DMMオンラインサロン~第3章 M&Aの会社の価格・価値とは①~

DMMオンラインサロン~第3章 M&Aの会社の価格・価値とは①~
買収後に問題が発覚するケースが8割

 みなさんはいろいろ目線や考え方で会社を購入していると思うが、当社の一般的な基準も今後の参考にしてください。

 M&Aの成否は、企業選びの目利きがすべてです。M&Aにおいては、購入後に故意であるのかないのかは別として、悪いことが発覚するというケースが多々あります。デューデリジェンスをして、弁護士、会計士を入れて購入すれば、失敗しないのでしょうか?プロがやっても失敗はします。それは、多数の専門家が入って購入した、東芝や武田薬品の結果が物語っています。  
 上場企業の経営者としては優秀な方でも、M&Aでは所詮素人なのです。
私もM&Aをたくさんしていますが、後になって問題が発覚するケースが8割くらいあります。では、どのように考えて購入すればよいのでしょうか?

「最初から失敗する」
「嘘がある」
「騙しがある」

と思ってリスクを想定して購入しているのです。
 成功の想定は意外と難しく、その通りに行くこともほとんどありません。逆にリスクは意外と想像できるものです。はじめからリスクを想定して、上手くいかないことを前提に購入していれば、東芝も解体に至ることはなかったはずです。
 最大リスクと想定利益が分かれば、逆算してM&Aの購入価格も算出できます。では、企業価値を求めるのに何が一番大切なのでしょうか?それは、嘘を見破る眼力と経験以外にありません。決算書や試算表はいくらでも嘘がつけます。

「面談時の社長に嘘があるのか?ないのか?」

嘘が一つでもあれば、購入してはいけません。逆に嘘がないのであれば、交渉を進めてください。 例えば、こんな内容に騙されてはいけません。

仲介「このラーメン屋さんは1店舗で年間利益が1300万円あります。売値が2800万円なので、3年かからずに投資資金を回収できます。すぐに売れてしまうから早めに購入をお願いします」

私「社長の給料はどうなっていますか?」

仲介「アルバイトでお店が回っているので、社長が現場に出なくても運営できています。ですので、社長はこのお店からは給料をもらっていません」

私「それでもアルバイトの管理とか、財務管理とか、万が一、アルバイトが辞めてしまったときなどは、お店に入れるようにしておかないといけないですよね?」

仲介「いいえ、売主の社長に確認したら、やはりほとんど何もしていなくて、従業員に任せっきりということでした」

怖い話です。もしこの会社を購入して、後でアルバイトが辞めてしまったらどうなるのでしょうか?箱しか残りません。引継ぎの経理、仕入れ方法、HPの更新、シフト管理等々、やるべきことはたくさんあるはずです。それを一体、誰がやるというのでしょうか?
 売る側は少しでも高く売りたいと考えるのが普通です。だから利益が多くあるように見せようとします。この場合、実際の売値はいくらになると思いますか?
 後任の責任者の給料(社会保険+交通費等含む)を年間600万円とすると、

年間利益1300万円-責任者給料600万円=利益700万円

となります。2800万円の投資に対して700万円の利益ですので、利回りは25%。投資回収は4年となります。飲食業としては長過ぎます。
 実際、さらに話を進めていくと、売主は実は2店舗もっていて、1店舗を売却し、売上の良い方だけそのまま運営しようと考えていることが分かりました。-プロがやってもうまく行かない店舗を売って、良い方だけ自分のところで運用する-なんとも都合の良い売主です。これでは、良い従業員は自分の店舗に来てもらって、悪い従業員だけ売却店舗に残すということも考えられます。かなりリスクの高い案件だと言えます。
 会社ごと株式譲渡するのではなく、事業譲渡や子会社を切り離して売却するという場合には、優秀な人材が本部に引き上げられてしまっているというケースが多々あります。製造業以外は、会社は人で回っていると考えて下さい。人財も財産と考えて試算してください。

(次号へ続く)