賃貸経営トラブル相談室~虚言癖のあるクレーマーへの対応、どうすればいいの?~|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2023.12.25

賃貸経営トラブル相談室~虚言癖のあるクレーマーへの対応、どうすればいいの?~

賃貸経営トラブル相談室~虚言癖のあるクレーマーへの対応、どうすればいいの?~
二次クレームを避けるための効果的な手段とは?

 家主業をやっていると、たまにとんでもない入居者に出会うことがあります。入居する際に会ったときはいたって普通のように見えたのに、いざ物件での生活が始まると態度が豹変。どんな些細なことに対しても難癖をつけてきたり、さらに周りの入居者にも迷惑をかけたりするモンスタークレーマーは少なくありません。もしそんな問題入居者に遭遇してしまったらどうすれば良いのか?実例をもとに検証します。

「1年がかりである入居者を退去させたことで、物件内に平穏な日々が戻りました。私が知る限り、あの入居者のせいで2人も出て行っていたので、今は胸を撫でおろしています」

こう話すのは、東京都墨田区でマンションを経営する田畑健介(仮名)オーナーです。“ある入居者”とは、2018年に入居者した生活保護を受けている50代の男性A氏。マンションを建ててから20年、それまでトラブルとは無縁だった田畑オーナーの家主歴は、かの男性の入居によって一変したという。
 最初の問題が起きたのは男性が入居してから1週間後のこと。田畑さんが家族でマンションから15分ほどの場所にある鍋料理屋に食事に出かけていると、携帯電話に見知らぬ番号から着信が。出てみると、それはA氏でした。A氏は田畑さんが電話に出るや否や、周りにも聞こえるほどの大きな声で

「隣のやつがうるさくておちおち昼寝もできない!何とかしてくれ!」

と叫んだそうです。突然のことに驚いた田畑さんは、とりあえずすぐに部屋に伺うと男性に伝えて電話を切ると、急ぎ足でマンションに向かいました。

「A氏の隣人はうちのマンションに入居して5年の男性。会えば必ず挨拶をしてくれる温厚な方で、騒音を立てるような人じゃありません。いったい何があったのか、そんなことを考えながらマンションに急ぎました」

 田畑さんはマンションに到着すると、まずA氏の部屋を訪ねました。A氏はまだ興奮冷めやらぬ様子で田畑さんに対し、

「こんなうるさい人間がいるなんて聞いてない!これじゃとてもじゃないが家賃なんて払えないからな!」

と怒鳴り散らしました。この発言に

「いきなり家賃のことを持ち出すなんてまともじゃない・・・」

と感じた田畑さんは、

「まず隣の方に状況を確認しますから、少しお時間をください」

とA氏の言葉を鵜吞みにはしないように注意しながら何とかその場を収め、A氏が部屋に戻ったのを確認してから隣の部屋の呼び鈴を鳴らしました。しかし、隣人は不在のようで、応答することはありませんでした。田畑さんは改めてA氏の部屋を訪ね、インターホン越しに

「隣の方はすでに出かけられたようなので、戻って来てから改めて訪ねることにします。それまでもう少し辛抱してください」

と状況を伝えてから、エントランス脇にある管理人室で待機しました。
 待つこと2時間、隣人男性は大きな手提げカバンを持って外出から戻ってきました。田畑さんはエントランスで声をかけ、一連の出来事について尋ねました。すると男性は予想外のことを言いました。

「僕はこの2日間、彼女と旅行に行っていて部屋にいませんでしたよ」

一体どういうことだろう?田畑さんは事実をそのまま伝えるために、再びAさんの部屋を訪ねました。しかし、Aさんはさっきにもまして興奮した様子で、

「もうこんなところに住んでいられない!別の場所に引っ越すからお前が引っ越し代を負担しろ!」

と言い出しました。とても冷静に話ができる状況ではないと判断した田畑さんは、どうにかAさんを部屋に入れた後で、隣人男性にいくつか質問しました。そして

・Aさんの部屋からは毎晩、うめき声のようなものが聞こえる
・今のところ扉や壁を叩かれたことはない
・普段も仕事で帰りが遅く、帰ってきたらすぐに寝るだけのため騒音を出した覚えは一度もない

ということがわかりました。Aさんの行動に異様さを感じた田畑さんは入居申込書に書かれた保証人に連絡をしてみることにしました。

「保証人から聞いた話では、Aさんはたまに極端な虚言を言う癖があるようで、以前にも一度、当時住んでいたアパートのオーナーと問題を起こしたことがあったそうです。その後、保証人の方がすぐに駆け付けてくれて、『隣人には何ら問題がないからこれ以上騒ぎを起こさないように』と注してくれたおかげで、以降はクレームの類は一切なくなりました」

 入居者は考え方も個性も、育った環境もそれぞれ違います。中にはちょっとしたことで文句を言う方もいます。問題はクレームを受けたときにどう対応するかです。対応がまずいと二次クレームになったり、収拾がつかなかったりするため、慎重さが必要です。田畑さんの場合、自分だけで判断せず、入居者のことをよく知っているであろう保証人に連絡したことが功を奏しました。みなさんも、クレーマーには気を付けてください。賃貸経営に関するご相談はお近くの全国優良リフォーム会員まで。