施主を抱き込んで保険金を騙し取ろうとした悪徳業者|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.03.11

施主を抱き込んで保険金を騙し取ろうとした悪徳業者

施主を抱き込んで保険金を騙し取ろうとした悪徳業者
うまい話には裏がある!?

 冬は雪による自宅損壊の被害が増えるため、詐欺的な手法で生計を立てる悪徳リフォーム業者の動きがもっとも活発になる時期です。しかも、中にはそうした業者と結託して、保険会社から保険金を騙し取ろうとする施主もいます。詐欺の被害に遭わないことも大事ですが、お金に目がくらんで、悪徳業者の口車に乗ることだけは絶対にしないでください。施主と悪徳業者が結託した保険金詐欺の事例を取材しました。

「雪の重みで屋根に穴が開いたことにすれば修理費用は全額保険金で賄える。屋根は新品同然になるし、うまくいけば家財も買い換えられる」

 新潟県上越市で工務店を経営するA氏は、昔からの知人で父親から相続した築45年の一戸建てて暮らすA氏と結託して、保険会社から保険金を騙し取ろうとしました。
 A氏の計画は、S氏が加入する火災保険を使って、自宅の屋根が雪で破損したことにして、その修理費用として保険金を請求するというものでした。ここで

「雪の被害なのになんで火災保険?」

と疑問に思う方もいるかもしれません。ご存じない方もおられるかもしれませんが、実は火災保険はさまざまな自然災害も補償してくれる万能保険で、当然、雪で自宅が被害を受けた場合も、その修理にかかる費用を補償してくれます。A氏はここに目を付け、保険金を騙し取ろうと企てたわけです。ちょうど良いことに、S氏宅の屋根は老朽化により一部が破損していました。雪が降ったタイミングでちょっと手を加えれば、あたかも雪の重みで屋根が破損したように見せかけることができると踏んだようです。
 話を持ち掛けられたS氏は最初、この話を断ろうと考えたそうです。詐欺なのだから当然です。しかし、A氏から

「こんなこと、程度の差こそあれどこのリフォーム会社でもやっていることだ。それにうちはこれまでに何件も保険金を使った修理をしてきた。『修理にこれだけかかる』と言えば絶対にバレることはない。調査員が現場を見に来ることもあるが、奴らは所詮素人。本当に雪のせいで破損したかどうかなんてわからない」

と説得され、計画に乗ってしまいました。
 1月下旬、北陸地方で数日にわたって大雪が降りました。A氏は好機到来とばかりに雪が止むや否や、すぐにS氏宅を訪問し、元々破損していた屋根に故意に手を加え、あたかも雪の重みで屋根に穴が開いたように偽装しました。作業が終わると、A氏は手はず通りに保険会社に連絡。

「自宅が雪で被害を受けた。修理にはそれなりに費用がかかりそうなので、火災保険を使いたい」

と言って、保険金の請求をしました。この時期、自宅破損の問い合わせが殺到していたこともあり、保険会社はパンク状態。このままいけば大した調査も行われることなく、A氏とS氏は、計画通り保険金をせしめるところでした。
 しかし、事態は急変します。驚くべきことに、二人と同じような手口で保険金を騙し取ろうとした悪徳業者が他にもいて、詐欺行為が発覚してしまったのです。保険会社はこの一件を受け、現地調査を厳格化。詐欺の発覚を恐れたS氏は申請を取り下げ、A氏との関係を断って、別のリフォーム会社に頼んで屋根の修理をしたそうです。A氏の口車に乗って詐欺に手を染めかけたS氏は本紙に次のように告白しました。

「別の事件が発覚して調査が厳格化されていなかったら申請を取り下げなかったかもしれません。最後のところで思い直して本当に良かったです。A氏とはその後一切連絡を取っていませんが、風の噂で別の詐欺事件で逮捕されたと聞いています」

 悪徳リフォーム業者は消費者からだけお金を騙し取ろうとしているわけではありません。中にはあわよくば、消費者を抱き込んで保険金や補助金などを騙し撮ろうと企てる輩もいます。みなさんも決して甘い言葉に乗らないように注意してください。リフォームトラブルに関するご相談はお近くのリフォーム取引販売士まで。