賃貸経営トラブ対策相談室~契約していた法人が倒産?一体どうなるの?|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2024.03.25

賃貸経営トラブ対策相談室~契約していた法人が倒産?一体どうなるの?

賃貸経営トラブ対策相談室~契約していた法人が倒産?一体どうなるの?
3カ月分の未回収家賃はどうなるの?

 家賃滞納、クレーム、騒音等々、賃貸経営には常にさまざまなトラブルが付きまといます。トラブルがないに越したことはありませんが、性格や生活スタイルなどが違う多数の人が同じ建物内で暮らしている以上、トラブルをゼロにするのは、ほぼ不可能だと言っても過言ではありません。大切なのは問題が発生したときの対処の仕方です。問題を速やかに解決するためにも、賃貸経営に起こりがちなトラブルの内容とその対処法について、日頃からしっかり学ぶことを心掛けてください。実際に起こったトラブル事例を取材しました。

「契約していた法人が倒産してしまい、滞納していた3カ月分の家賃を踏み倒されてしまった・・・。契約する際にどうして保証会社を入れなかったのか、今更ながら後悔している」

 先日、本紙編集部に、東京都世田谷区に総戸数16戸の賃貸マンションを所有する大橋智也オーナー(仮名)から上記のような相談が寄せられました。
 大橋さんと入居契約を締結していたA社は2015年設立の輸入商社で、渋谷区に本社を構えていました。住人であるX氏は同社の代表者で、最初は個人で契約していたものの、入居から1年が経過した2017年に本人の申し出により、法人契約に切り替えたそうです。
同社の主業は海外ブランドの衣類の輸入販売で、コロナ直前2018年には売上約1億円を計上していました。しかし、コロナ禍で不要不急の外出自粛が呼びかけると、衣類の需要が減って業績は低迷。その影響か、2019年の夏頃から家賃の入金遅れが頻発するようになり、ついに2020年3月、3カ月分の家賃を滞納したまま、同社は倒産してしまったそうです。大橋さんが同社の倒産に気付いた時にはすでに部屋は蛻(もぬけ)の殻で、X氏とも一切連絡が取れなくなっていました。
 昨今は、家賃の滞納が発生した際には間に入っている滞納家賃保証会社が、入居者本人に代わって弁済してくれるのが一般的です。大橋オーナーも万が一の場合に備えて、入居者には滞納保証サービスへの加入を義務付けていました。もちろんX氏が入居する際にも、指定の滞納保証サービスに加入してもらっていたため、本来であれば家賃の滞納が発生しても大橋オーナーが損失をこうむらずに済むはずでした。しかし、実はX氏は入居契約を個人から法人に切り替える際に、法人であることを理由に滞納保証サービスへの再加入を拒否しました。当初、大橋オーナーはこれについて認めるつもりはなかったそうですが、手続きを進めていた時期が6月で、新たな入居者の確保が難しい時期だったことから、空室になることを避けるために最終的にA社(実質X氏)の要望を聞き入れました。
 実際、法人契約には個人契約にはいくつかのメリットがあります。よく言われるのが、個人に比べて滞納のリスクが少ないということです。特に契約する法人が大手であれば大手であるほど安心です。
 また、社員寮や社宅として利用してくれた場合、入居期間が長期になる傾向にあることもメリットの一つとして挙げられます。退去が少なければ家賃収入は安定します。オーナーにとってはこれほどありがたいことはないでしょう。大橋オーナーがX社の要望を聞き入れたのは、こうした点も踏まえてのことだったと推察されます。
 話を戻します。結局、契約がX氏個人から法人のA社に切り替わった時点で滞納保証サービスが外れてしまったため、当然ながら、滞納された3カ月分の家賃は誰も弁済してくれません。管理業務を不動産会社に委託していれば、自ら家賃の回収に動く必要はありませんが、残念ながら大橋オーナーは入居募集以外の業務をすべて自分で行っていました。つまり、家賃は自力で回収するしかありません。

「とりあえず倒産した会社について八方手を尽くして調べてみましたが、すでに債権回収できるような状態ではありませんでした。弁護士に依頼することも考えましたが、仮に3カ月分の滞納家賃を回収できたとしても弁護士費用を支払ったら大赤字です。いろいろ検討した結果、今回は勉強代を支払ったという気持ちで諦めることにしました。今後は法人だからという先入観をもたないように気を付けたいと思います。部屋に残置物が一切残されていなかったことがせめてもの救いです」

 仮に契約した法人が大手企業だったら、倒産した場合には破産管財人がきちんと事後処理をしてくれるので、今回のように泣き寝入りする必要はなかったかもしれません。法人というだけで信用するのではなく、きちんと業務内容や業績等を調べた上で契約しなかったことが、今回の失敗を招いた要因だと考えられます。相手法人が大手の場合を除き、基本的に滞納保証サービスへの加入は義務とするのが無難と言えるでしょう。
 みなさんは賃貸経営のことで何かお悩みではありませんか?もし直面したトラブルに速やかに対処できない場合は、一人で解決しようとせず、信頼できる専門家に相談するようにしてください。お悩み事は賃貸経営の知識やノウハウも豊富な全国優良リフォーム会員まで。