日本賃貸業界歴史体系~400年の歴史を誇る日本の貸家ビジネス(前編)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2026.02.16

日本賃貸業界歴史体系~400年の歴史を誇る日本の貸家ビジネス(前編)

日本賃貸業界歴史体系~400年の歴史を誇る日本の貸家ビジネス(前編)
江戸時代にもいた管理人 日本初のアパートは明治時代に誕生

 日本の賃貸不動産ビジネスの歴史は意外にも長い。元を辿れば約400年前の江戸時代の長屋にまで遡る。長い歴史を通じてさまざまな商習慣ができ、制度や法律が整備されながら現在の不動産ビジネスが形作られてきた。本紙ではこれまで「真説賃貸業界史」と題し、日本の賃貸業界の歴史や出来事についてまとめてきた。今後、本紙では改めて「真説賃貸業界史」をベースにしつつも、新たな事実や時代考証などを加えて業界の歴史をまとめていく。まうは2回に分けて、日本の管理会社誕生の歴史を紐解いていく。

 不動産業界における「管理会社」とは、土地や建物を管理する不動産業者のことを指す。とりわけアパートや賃貸マンション、貸家等の賃貸住宅を管理する不動産業者は、分譲マンションを管理する事業者と区別するため、「賃貸管理会社」と呼ばれる。過去に一度でもアパートや賃貸マンションを借りたことがある方ならご存じだろう。
 さて、そんな賃貸管理会社は一体いつ誕生したのだろうか。日本で賃貸ビジネスが始まったのは江戸時代だとされる。原型となったのはいわゆる“長屋”だ。江戸時代の長屋は一つの建物を、表通りに面した「表長屋」と、裏側の「裏長屋」に分け、前者が主に店舗を兼ねた住居に、後者を職人などの住居として使っていた。当然、風呂はなく、井戸や共同トイレは長屋の中心に配置されていた。最近は見かける機会が減ってしまったが、以前よくテレビで放送されていた時代劇には、必ずと言っていいほど長屋が登場していた。当時の経済の中心地である江戸では、土地は6割が武士、2割が寺社、2割が町人という割合で所有されていた。土地を所有する町人の中には長屋を建てて貸し出す者がいて、これが今に続く賃貸ビジネスの源流となったとされる。ただし、地主は直接長屋を管理することはあまりなく、基本的には「家守」と呼ばれる、今でいう管理人のような立場の人間に管理業務を任せていた。時代劇では分かりやすく「大家さん」と呼んでいることが多い。資料によると、当時の家守の主な仕事は

・家賃の集金
・長屋の修繕
・長屋の敷地内の掃除
・長屋住人の世話
・長屋住人の身元保証

だった。こうして列挙してみると、現代の管理人が行っている仕事とほとんど変わりないことが分かる。余談ではあるが、「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」という慣用句は、当時、入居者である店子が何かしらの問題を起こした場合、身元保証人として家守も連帯責任を取らされていたことに由来する。
 さて、時代が流れ明治時代になると、新政府により不動産関係の法整備が進められ、土地に番号が振られるようになり、測量も進んだ。現代的な土地所有の制度が確立されたのはこの頃だ。
 賃貸ビジネスも江戸時代に比べると大きく発展し、具体的な数を記した資料はないものの、借家の数はかなり増えたようだ。明治中期になると、今も営業を続ける我が国初の不動産会社、東京建物が安田善次郎によって創設された。創業年は1896年とあるから、今年は130周年に当たる。名実ともに日本を代表する最古の不動産会社だ。
 明治時代の貸家は相変わらず長屋が中心だったが、一方で欧米の文化の影響を受けた建物も少しづつ建てられるようになった。日本初の木造アパートとして知られる「上野倶楽部」(明治43年築)もこの頃に建てられた。52坪の敷地に建て坪49坪、5階建て63戸と規模はなかなかに大きく、各戸に水道・ガスが配備されただけでなく、共同の風呂まで完備していたというのだから驚きだ。ちなみに上野倶楽部が完成した11月6日は、一部で「アパート記念日」と呼ばれることがあるそうだ。
 さて、大正時代になると、さらに法律や制度の整備が進み、近代の借地・借家法の土台が完成した。一方で建設技術も進化し、1916(大正5年)年には日本初の鉄筋コンクリート造の集合住宅「炭鉱住宅」が長崎県沖の軍艦島に建設された。また、1924年(大正1③年)からは、関東で同潤会がアパート建設を開始。1933年までの間に、東京で13ヵ所2225戸、横浜で2カ所276戸のアパートを建てた。
 昭和時代初期は大正時代の流れをそのまま引き継ぎ、特に初期においては不動産業界では大きな変化は見られなかった。大きな変化がもたらされたのは、終戦後に農地改革が実施されてからだ。全国に無数いた大地主のほとんどはわずか数年で地上から姿を消した。一方で国を挙げての宅地供給政策が功を奏し、不動産流通は活発化。アパート建設に力を入れる住宅メーカーも台頭し、賃貸ビジネスが広く、世間に知られるようになっていった。昭和50年代、いよいよ管理会社が日の目を見る時代を迎えることになる。

(次号へ続く)